大手物流企業の脱炭素への取り組みは?
2024年 08月22日
ECビジネスが大きくなってきて、会社が大きくなった場合、社会的な責任も果たさなくてはならないこともあるでしょう。
特に近年では、脱炭素の取り組みが注目されており取引する業者にも脱炭素が求められます。
この記事では、そんな脱炭素に取り組む大手物流企業について解説していきます。
脱炭素とは?
脱炭素とは、地球温暖化の主要な原因である二酸化炭素(CO₂)の排出を「実質ゼロ」にすることを目指す取り組みのことです。
これは、CO₂排出を削減し、同時に吸収量を増やすことで、最終的に全体として排出量をゼロに近づけることを目標としています。
2015年に採択されたパリ協定に基づき、世界各国が「2050年までにカーボンニュートラル(実質的なCO₂排出ゼロ)」を達成することを長期目標としています。
特に、日本を含む多くの国々で、脱炭素社会の実現が急務です。
これにより、エネルギー源の再生可能エネルギーへの転換、産業や交通分野での排出削減、炭素排出権取引の導入など、多岐にわたる施策が進められています。
物流業界の脱炭素の取り組み
物流業界では近年、脱炭素への取り組みが求められ、その対応が急務となっています。
日本の部門別二酸化炭素排出量を見ると、運輸部門からの排出量は年間約1億8,500万トンで、全体の17.7%です。
特に貨物輸送分野では、ECサイトの急速な拡大に伴い配送が多頻度かつ小口化しトラックの積載効率が低下しているため、二酸化炭素排出量の削減が遅れている現状があります。
この背景には、消費者の利便性向上と共に短期間での配送が求められる「即日配送」や「翌日配送」の増加があり、これが物流業界における環境負荷を増加させているとも言えるでしょう。
物流業界においては、このような状況を改善するために積載効率の向上や、より環境に優しい配送方法の導入が進められてきました。
具体的には、電動車両や燃料電池車の導入、配送ルートの最適化、さらには共同配送やコンソリデーション(集約配送)などが注目されています。
さらに、企業間での協力体制が強化され共通の配送ネットワークを構築することで、効率的な配送を実現し二酸化炭素排出量を削減する取り組みも見られます。
物流大手各企業の脱炭素の取り組みは?
物流大手の各企業はどのような脱炭素の取り組みを行っているのでしょう。
ここからは、物流大手の各企業の取り組みについて解説していきます。
佐川急便
佐川急便は、トラックによる長距離貨物輸送を、CO2排出量が少ない列車や船舶の輸送に切り替える「モーダルシフト」に注力しています。
2004年から日本貨物鉄道と共同開発した電車型特急コンテナ列車による輸送を開始し、さらに2023年には「飛脚JR貨物コンテナ便」を導入しました。
この取り組みにより、CO2排出量を一運行あたり80%以上削減しました。
これにより、2023年に「モーダルシフト最優良事業者賞」を受賞しています。
また、地域の輸送事業者と連携し、貨物と人を同時に運ぶ「貨客混載」も実施し、輸送効率を高めています。
ヤマト運輸
ヤマト運輸は、2022年度にカーボンニュートラリティを達成し、宅配便3商品(宅急便、宅急便コンパクト、EAZY)におけるCO2排出量を実質ゼロにする取り組みを行いました。
この達成には、輸送効率の向上、省エネルギー設備の導入、再生可能エネルギーの利用といったCO2排出量の削減策が用いられています。
また、削減が困難な部分については、自社の森林で吸収されるCO2やカーボンクレジットを活用してオフセットを行っています。
三菱倉庫
三菱倉庫は、2050年までにCO2排出量を実質ゼロにすることを目指し、省エネ設備の導入やEVトラックの活用など、物流設備の低炭素化を進めています。
特に注目されるのは、2022年に始めたCO2排出量の可視化への取り組みです。
Hacobu社のシステム「MOVO」を利用し、輸配送単位ごとのCO2排出量を可視化する実証実験を行っています。
これにより、物流業務に関わる複数企業が協力して、排出量削減に向けた具体的なデータを活用できるようになりました。
日本郵船と日本航空
日本郵船は、船舶燃料をLNG(液化天然ガス)やアンモニアなどの次世代燃料に転換することで、CO2排出量を大幅に削減しています。
2017年にはLNG燃料供給船「Green Zeebrugge」を運行開始し、2023年にはアンモニア燃料の安定燃焼に成功しました。
2030年度までに約4500億円を投じ、船舶の脱炭素化を進める計画です。
日本航空は、持続可能な航空燃料(SAF)を導入し、2030年までに全燃料の10%をSAFに置き換えることを目標としています。
SAFは主に植物由来の有機物を原料とし、従来の化石燃料に比べてCO2排出量が少ないため、航空業界の脱炭素化に大きく貢献しています。
まとめ
ビジネスが大きくなってくると取引先の取り組みも気になるところでしょう。
金額だけではなく、環境に配慮した取り組みをしている配送業者を選択することも視野に入れてみてもいいかもしれません。
国立倉庫のEC通販物流代行サービスでは、大規模なものから小規模のものまで入出庫量に関係なく対応しています。
参考URL
- 物流業界の脱炭素動向 | 東京海上日動について | 東京海上日動火災保険 (tokiomarine-nichido.co.jp)
- 物流業界の脱炭素化と大手物流企業のGX事例|新電力ネット (pps-net.org)
- ヤマト運輸が切り拓く、カーボンニュートラル配送:物流業界における新たなマイルストーン – Kabbara Times